フルートの教則本(エチュード)で最も有名なもののひとつである「ケーラー」の植村泰一による解説本について説明します。
ケーラーをやるのであれば必ず横に置いておいた方がよい一冊です。
著者である「ケーラー」「植村泰一」について説明し、「分析・解釈・練習法」を説明します。その後にCDやYouTubeの演奏を紹介します。
ケーラー
Ernesto Köhler (1849-1907)とCarl Joachim Andersen (1847–1909)、ほぼ同時代を生きたフルート吹きのうちケーラーを紹介します。
ケーラーはイタリアで生まれ、父にフルートの手ほどきを受けます。
同時代において最高のフルート吹きの一人であって、モデナ、ウィーン、サンクトペテルブルクのオーケストラでフルート吹きとして吹いています。
作曲家としては、100曲を超えるフルートのための作品を残しています。
現代のフルート吹きが練習する教則本Op.33を中心にして、多くの曲が現在でも吹き継がれています。
教則本そのものについては以下を参照してください。
植村泰一
植村泰一(1934-2022)は、戦後から2020年代まで多くの足跡を残した偉大なフルーティストです。
慶應義塾大学卒業で、東京芸術大学別科修了、という経歴です。
大学を出られて1990年定年までNHK交響楽団のフルート吹きとして活躍されました。
その後は、東京音大で学長、理事長を務めておられます。
多くの教則本の翻訳もされています。本記事のケーラーやアルテスの教則本が有名です。
長い間一線で活躍され、教育にも力を注がれたため著名な弟子が多数存在します。
実は、私の先生も植村先生の弟子なので私は孫弟子です。孫弟子、ひ孫弟子みたいな一門的な感じで言うと、相当数のフルート吹きが植村一門です。
2022年10月号の「The Flute」に追悼記事が掲載されています。中野真理さん、岩佐和弘さん、吉野裕子さん、白川真理さんが弟子として追悼記事を書かれています。
1998年頃だったと思いますが、植村先生がルイロット購入した記念の演奏会というのがあって、聴きに行きました。感動で打ち震えたのをよく覚えています。
分析・解釈・練習法
「ケーラー・フルート第1巻・作品33-1 分析・解釈・練習法」というのがこの本の正式な名前のようですが、長いので「分析・解釈・練習法」と呼びます。
楽譜がついている
この本には楽譜が付いています。
ケーラーのOp.33はいろいろな版がありますが、最も古いフィッシャー版も初版ではなく明らかな間違いを含んでいるそうです。
ということで、植村先生がいろいろな版を比較検討した結果の楽譜が付いています。
他の版と比較してどう違うかを見るのも面白いです。
分析・解釈
各曲の分析・解釈が書いてあります。曲は、単に音符をなぞるだけでは成り立たず、音符の持つ意味と表情、全体構成をよく理解して、それを表現できるテクニックを身に付けることで、音楽に使づきます。
この曲集の分析・解釈で、それらをしっかりと理解することができるように書かれています。
練習法
いろいろなヒントを与えてくれます。
指がつかえそうなところの練習方法、音程がまずそうなところの練習方法、和声を意識して音を出すこと、、、、
一生、大事にできる本だと思います。
使い方
独学で練習する
ケーラーを独学でやるのであれば必携の書となります。
楽譜にはほとんど書いていないことをいろいろ書かれていて、練習のヒント、考えるヒントになります。
ここまで考えてフルートを吹くんだ!といつも感動します。
たまにはワンポイントレッスンを受けてみて下さい。
先生に見てもらう前に読んで練習する
レッスンの時間は有限です。音楽としての完成度を高めるために植村先生の解釈をよく読み込んで、練習しておくと、レッスンの時間を有意義に過ごすことができると思います。
レッスンでは安くないお金を払うわけですから、しっかりと読みこんで練習してから臨みましょう。
「ケーラー」エチュードの演奏
ケーラーの本の演奏はCDになっていますし、YouTubeでも全曲録音しているフルーティストもいます。
まずは加藤元章さんの録音です。
N響の神田寛明さんの録音です。
YouTubeでは多くのフルーティストが録音されています。聴き比べてみると結構違いますね。
岩崎花保さん
阿部静香さん
町田亜衣さん
立花雅和さん。第1巻をライブで全曲という試みです。
まとめ
植村泰一「ケーラー・フルート第1巻・作品33-1 分析・解釈・練習法」について説明しました。
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