1940年頃ビバップから始まったモダンジャズ、1950年頃になるとビバップを超えて克服する試みが始まります。最初の成功はクールジャズです。ウェストコーストジャズとも言われます。
ジャズ全体を俯瞰したい方は以下をどうぞ。
詳しく本で読みたい方は以下がお薦めです。
クールジャズ
1940年頃にビバップによってモダンジャズが始まりました。
10年もすると飽きたのか、あるいは新しい試みをやりたなくなったのか、クールジャズが誕生しました。
1950年頃、マイルス・デイビスが「Birth of the COOL (クールの誕生)」を出します。アルバム名にクールとあるのがクールジャズの名前の元となっています。
何がクールなのか?ビバップと比較してクール、後から出てくるハードバップと比較してクールという文脈で語られます。
おそらく下記のいくつかを満たしていればクールと言われます(全部みたしてなくてもよい)。
- 人数多めでアンサンブルを大事にするクール
- 楽譜が存在する知的なクール
- ソロが分かりやすいクール
- 白人中心のクール
- 内面的な感情の発露より音楽的均衡を大切にするクール
人数多めでアンサンブルを大事にするクール
ビバップは3人~5人のセッションが多いのに比べて、クールジャズは10人くらいになります。
スイングジャズほどではありませんが人数が多い構成になります。
人数が多くなるとみんなで合わせるということを自然にやりだします。
ということで、アンサンブルを重視されます。
楽譜が存在する知的なクール
ビバップの曲はほとんどがソロで構成されます。楽譜なんかほぼないと思われます。
人数が多いとどうしても楽譜がないとできません。ということで、ビバップより楽譜化される率が高くなります。
音楽教育をいくらか受けないと楽譜は読めませんから楽譜があることが知的な感じがするのかもしれません。
ただし、ソロはその場の即興で行っていたと思われますので、ソロは楽譜に起こされてはいないようです。
ソロが分かりやすいクール
飽くまでビバップと比較してですが、ソロが分かりやすくなります。
良く分からないけど音をいっぱい詰め込むみたいなのはほぼなくなって、ソロでもメロディーを奏で始めます。
白人中心のクール
創始者というべきマイルス・デイビスが黒人なので変な言い方ですが、クールジャズの多くは白人を中心に発展します。
当時は人種差別が色濃く残る時代です。白人というだけでメリット(あるいはデメリット)があったのかもしれません。
内面的な感情の発露より音楽的均衡を大切にするクール
神が下りたようなソロよりも音楽を奏でるソロ。
抑圧された世界に何かを投げかける内面的な感情の発露がビバップだとしたら、クールジャズのソロは曲を芸術作品として完成させる洗練さです。
ウェストコーストジャズとは クールジャズと同じ?
スイングジャズとビバップがニューヨークを中心とした東海岸で発展しました。
一方、西海岸(ウェストコースト)、特にロスアンゼルスにミュージシャンが集まり始めました。
ハリウッドが映画音楽を作り始めて、多くのミュージシャンを必要とし始めましたからです。
映画音楽に集められたのは、複雑なリズムで複雑な音型であっても初見かそれに近い状態で本番のレコーディング、という状態を生き抜くことができる猛者たちです。
多くは音楽教育を受けた白人たちでした。彼らが映画音楽に飽き足らずジャズをやり始めます。
このロスアンゼルスを中心としたジャズをウェストコーストジャズといいます。
楽譜が読めて、白人で、音楽的調和を大事にするジャズ、まさにクールジャズです。ということで、ウェストコーストジャズはクールジャズとほぼ同じ意味になります。
創始者のマイルス・デイビスは東海岸ですし、ウェストコーストジャズの中でもクールさとかけ離れた人も中にはいますので、完全に同じではありませんが、マイルス・デイビスがすぐにハードバップの中心になることで、余計にクールジャズとウェストコーストジャズは同一視されるようになりました。
クールジャズの名曲
クールジャズの名曲を数曲紹介します。
BrubeckのTake Five
BrubeckのTake Fiveという曲ははずせません。よく知られている曲ですが、5拍子であるため演奏するのは勇気がいる曲です(実際のセッションは見たことがありません)。
Chet Baker
チェット・ベイカーはトランペット奏者かつボーカリストです。ゆっくりとしたソロを得意にしています。
Stan Getz
スタン・ゲッツはテナーサックスの名手です。
のちに「イパネマの娘」を大ヒットさせますが、その前からクールテナーの名手として知られていたようです。
まとめ
クールジャズを紹介しました。
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