オーケストラにおいてはフルートの位置についてあまりバリエーションはありません。
後ろのひな壇の最前列、真ん中あたりか少し下手です。
吹奏楽になるとフルートはいろいろな場所で吹くことになります。
なぜ、吹奏楽においてフルートの位置は様々なのか、
どう変遷したきたかについて、考察してみました。
役には立ちませんが知的好奇心を満たす記事です。
※本記事では、上手(観客から見て舞台の右)にフルートがいる配置に対して否定的な見解を持っています。ご不快に感じる可能性があることを注意します。
吹奏楽におけるフルートの位置
フル屋です。
吹奏楽のフルートの位置、楽団によって、演奏会によって、いろいろです。
- オケのように定型が決まっていない
- フルートの人数が多すぎ
などの理由で、さまざまな位置で吹くことになっているようです。
オーケストラのバイオリンの位置関係と、吹奏楽のフルートの配置から考察を試みます。
※いつから始まったかとか誰が考えたかという議論はしません。おそらく多くの吹奏楽関係者が何度も再発見、再発明していると考えるからです。
フルート以外の配置については、以下の記事をお願いします。
上手と下手
フルートの配置の前に、舞台の位置の用語の意味を説明しておきます。
舞台上の位置の呼び方ですが、観客または指揮者から見て右側を上手(かみて)、左側を下手(しもて)と呼びます。
歌舞伎由来の言葉らしいので、日本特有の言葉です。
欧米では、右とか左とか言うらしいです。指揮者から見ての右は演奏者から見て左です。間違えやすいので、本記事では上手、下手を使います。
フルートは舞台上手は嫌です
フルートは、楽器を右側に構えます。
まっすぐ構えて吹けるクラリネットなどと比べると、フルートは左を向くことになります。
一方、フルート奏者は舞台上手から指揮者を見ると、右側に指揮者が見えます。
フルートは舞台の上手に座れ、と言われると
- 構えたときに左を向く
- 指揮者を見るために右を向く
を満たせと言われているのと同じです。
観客に背中を向けるような格好になればできますが、観客に背中を向けていいんですか?
姿勢については以下に書いています。
>>> 【フルートを吹くときの姿勢】演奏中の姿勢:いつも注意すること3選
全国大会で金賞をとるような団体でもフルートが上手にいることがあります。
どうしてこういうことになっているのかを紐解いていきます。
10人以下のアンサンブルのとき
どこに誰がいようが気にしません。そもそも指揮者もいないことも多いですよね。
フルート4重奏を演奏するとき、1stが上手にいることも下手にいることもあります。
真ん中に1stがいるのも見たことがあります。自由です。
少人数であれば立って演奏するからか、右を向くとか左を向くとかあまり気になりません。
同様に超少人数の吹奏楽団体では自由な位置で演奏します。これからする分類とはちょっと違います。
オーケストラのバイオリンの位置 2通り
おそらく吹奏楽のフルートの位置を決めるのを参考にしているのは、オーケストラのバイオリンの位置です。
オーケストラで主旋律を弾くバイオリンが、吹奏楽で主旋律を受け持つクラリネットとフルート相当と考えられるからです。
まずは、オーケストラのバイオリンの位置を見てみましょう。
オーケストラのバイオリンの位置は2通りしかありません。
1stバイオリンと2ndバイオリンが向かい合う形か並ぶ形です。
1stと2ndが向かい合う形
19世紀より前のオーケストラでは、以下のように1stバイオリンと2ndバイオリンが向かい合って座っていました。
掛け合いや対位法が、右と左から聞こえる効果を狙っていると考えられます。
現代でも少数ですがこの配置をとるオーケストラはあります。ウィーンフィルがこの形です。
1stと2ndが並ぶ
現代のオーケストラの主流の位置は以下のように1stと2ndが並ぶ形です。
19世紀頃から用いられるようになり、現代ではほとんどのオーケストラはこの配置です。
演奏者としては、向かい合っているパートより隣にいる方が合わせやすいです。
現代に近くなると、曲の途中で1stと2ndを合わせて3パートにするみたいな曲が登場してきて、隣り合わないと無理!というようなのもあります。
吹奏楽の配置のバリエーション
吹奏楽の配置について、フルート以外は概ね決まっています。オーボエとチューバの位置が少しバリエーションがあります。
フルート以外の配置については、以下の記事をお願いします。
吹奏楽の配置
本題の吹奏楽の配置を分類していきます。
オーケストラの2つの型を参考にして考えたのが吹奏楽の形と思われます。
本当はどうなのかは置いておいて、そういうことにして考えていきたいと思います。
※オーケストラと全然違うじゃん、という形もありますがごく少数なので今回は取り上げません。
吹奏楽では、主旋律をクラリネットまたはフルートが持ちます。
したがって、クラリネットとフルートはバイオリンのいる位置に置くと自然です。
概ね、フルートがどこにいるかによって以下のように分類しました。
- 1st, 2ndが向い合う形から、2ndをフルート
- 1st, 2ndが向い合う形から、1stをフルート
- 1st, 2ndが並ぶ形から、2ndをフルート
- 1st, 2ndが並ぶ形から、1stをフルート
- 1st, 2ndが並ぶ形から、1st後列にフルート
- 1st, 2ndが並ぶ形から、1st前列にフルート
- 一列目にフルート、オーボエ
- 一列目全部フルート
1st, 2ndが向かい合う形から
1st, 2ndを向かい合う形なので、クラリネットとフルートを向かい合う形にするという発想です。
下手にクラリネット、上手にフルートというフルートにとって嫌らしい配置です。
ある有名な高校がこの配置を採用していました。このときの残念感は計り知れません。
この形をまねるのであれば、以下のようにフルートを下手、クラリネットを上手にするべきです。
※フルート奏者の一方的な意見かもしれませんが
1st, 2ndが並ぶ形から、2ndをフルート
次の配置は、クラリネットを1stバイオリン、フルートを2ndを2ndバイオリンに見立てた型です。
オケを模した自然な発想です。
1st, 2ndが並ぶ形から、1stをフルート
「1st, 2ndが並ぶ形から、2ndをフルート」では、人数によってはフルートが上手側にはみ出てしまうことがあります。
フルートが上手に行きそうなときは以下を採用してほしいです。
下手が最高音で上手に行くに従って音が低くなるという考え方にとても合う考え方です。
1st, 2ndが並ぶ形から、1st後列にフルート
1stの位置に、前後クラリネット、フルートを並べる形です。
強豪校がコンクールで演奏するときはこの形が多いという印象です。
フルートにとってはとても吹きやすい位置です。
クラリネットとフルートはどっちが1stバイオリンか、という問をさりげなく避けていていい形です。
1st, 2ndが並ぶ形から、1st前列にフルート
「1st, 2ndが並ぶ形から、1st後列にフルート」ではクラリネットが前にいますが、フルートが前にいてもいいですね。
一列目にフルート、オーボエ
「1st, 2ndが並ぶ形から、1st前列にフルート」を変形させた配置です。
6人とか8人もフルートがいるのに、横一列に並べて上手側にはみ出るというパターンです。
この形の団体、多いです。なぜフルートを一列に並べるのか理解に苦しみます。
どんなパートも横に広がると合わせにくいですよ。
一列目にフルート
「一列目にフルート、オーボエ」から変化したんだと思います。フルートだけで一列目を埋めてしまうほどに人数がいる場合です。6人以上いると一列をフルートで満たすことができます。
もう、オーケストラの形とは似ても似つかないです。上手側にいるフルートは吹きにくいです。横に広がったフルートパートは全体として合わせにくいです。
意外にも採用数が多い型ですが、今すぐやめた方がよいと思います。
※「一列目にフルート、オーボエ」とは異なる発想なのかもしません。何を考えているか知りませんが、フルート奏者の演奏しやすさを犠牲にしていることは確実です。
まとめ
吹奏楽でのフルートの配置を、オーケストラ配置からの派生として、分類してみました。
フルートは下手に置いてください。上手は吹きにくいです。
フルート以外の配置については、以下の記事をお願いします。
楽団に入るときの注意事項は以下です。
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