フランスの音楽教育の最高峰であるパリ音楽院の卒業試験(コンクールとよばれる)では、
試験用に新曲が書かれることがありました。
パリ音楽院を紹介し、卒業試験の名曲を集めたフレンチコンポーザを紹介します。
- パリ音楽院と卒業試験(コンクール)
- 卒業試験(コンクール)
- フレンチコンポーザ
- 1898 G. Fauré – Fantaisie
- 1899 A. Duvernoy – Concertino
- 1901 L. Ganne – Andante et Scherzo
- 1902 C. Chaminade – Concertino
- 1903 A. Perilhou – Ballade
- 1904 G. Enesco – Cantabile et Presto
- 1906 Ph. Gaubert – Nocturne et Allegro scherzando
- 1907 P. Taffanel – Andante Pastoral et Scherzettino
- 1908 H. Busser – Prelude et Scherzo
- 1920 Ph. Gaubert – Fantaisie
- フレンチコンポーザ以外の名曲
- まとめ
パリ音楽院と卒業試験(コンクール)
フル屋です。
パリ音楽院
フランス音楽教育の最高峰とされるパリ音楽院です。世界中の音楽大学のお手本ですが、音楽院自体は大学ではありません。おそらくグランゼコール(フランス特有のエリート養成機関)相当です。
学歴社会のフランスではパリ音楽院修了、特に第1位(Premier Prix)は強力な武器であり、その卒業生には著名なフルーティストが多数です。
卒業試験(コンクール)
コンクールとよばれる卒業試験で、第1位(Premier Prix)を決めます。
卒業試験の曲一覧を見ると、1800年代はTulouとAltesの曲ばかりだったのが、1898年のFaureのFantasieあたりから著名な作曲家の新曲を採用するスタイルになります。
全部が新曲というわけではありませんが、パリ音楽院の卒業試験用として発表された曲は名曲多数です。
今でもコンクールの課題曲になるのはもちろんのこと、頻繁にリサイタルで演奏されます。
卒業試験だからか、ゆっくり歌う部分と指をバリバリ動かす部分に分かれていて、音楽を上手に表現できることが求められます。いずれも難曲ぞろいです。
フレンチコンポーザ
パリ音楽院の卒業試験の中の名曲をルイ・モイーズが集めたのが、「フレンチコンポーザ」と呼ばれる曲集です。
10曲もあってこのお値段はお得です。
以下に、曲の一覧を挙げます(年代順です)。いずれもフルートの名曲です。まずは聴いてみてください。
1898 G. Fauré – Fantaisie
現代フルート曲の中で特に有名な一曲です。
Wikipediaによれば、Faureが当時フルート科教授だったTaffanelに依頼されて作ったそうです。
1899 A. Duvernoy – Concertino
Duvernoyはピアニストで作曲家であり、パリ音楽院で教鞭をとっていました。
1901 L. Ganne – Andante et Scherzo
Ganneは指揮者かつ作曲家です。オペラを多く作曲しています。
1902 C. Chaminade – Concertino
フレンチコンポーザの中で特に人気の曲です。
シャミナードは死後いったん忘れられていましたが、フレンチコンポーザに取り上げられフルートでよく演奏されるようになって再評価されているそうです。
>>> シャミナード作曲コンチェルティーノ 至高のフルート名曲
1903 A. Perilhou – Ballade
Perilhouはサン・サーンスに学び友人でもあった作曲家、オルガニスト、ピアニストです。
1904 G. Enesco – Cantabile et Presto
ルーマニア人でエネスクと発音するのが正しいとされています。この曲を書いたのが23才という早熟の天才です。エネスクの代表曲は「ルーマニア狂詩曲」です。
バイオリン弾きとして有名で門下にメニューイン、グリュミオーなどの著名なバイオリニストがいます。
ルーマニアでは、エネスク音楽祭というお祭りが開催されています。
1906 Ph. Gaubert – Nocturne et Allegro scherzando
タファネル&ゴーベールで有名なゴーベール先生です。
Moyseが17才で第1位を獲得したときの曲です。
1907 P. Taffanel – Andante Pastoral et Scherzettino
パリ音楽院の教授で多くのフルートの名手を育て、多くの名曲を作ったTaffanel。
現代のフルートの中心がフランスになったのはTaffanelの貢献があったからといっても言い過ぎではありません。
1908 H. Busser – Prelude et Scherzo
Busserは長い間パリ音楽院で作曲の教鞭をとり多くの優れた門弟を育てました。
1920 Ph. Gaubert – Fantaisie
Gaubertのみが2曲もフレンチコンポーザに収録されています。
指揮者であり、フルート吹きであり、作曲家だったGaubertです。
フレンチコンポーザ以外の名曲
少なくとも以下の曲もパリ音楽院卒業試験のために作られたとされているようです。
1913 G. Hue – Fantaisie
Hueは東洋的なメロディーを駆使し、日本でも人気の曲です。
1942 E. Bozza – Agrestide
4本のフルートのための「夏山の一日」や無伴奏フルートのための「イマージュ」が有名なBozzaです。
1943 H. Dutilleux – Sonatine
Dutilleuxは20世紀後半を代表するフランスの作曲家として、多くの曲を作曲しています。
1944 A. Jolivet – Chant de Linos
Jolivetのリノスの歌です。ランパルはこの曲を吹いてパリ音楽院の第一位を獲得しました。
ここからは、発表した年と卒業試験の年がほぼ同じですが、ネット上の情報だけでは、パリ音楽院用に作曲したのかどうかはっきりと分かりませんでした。
1934 J. Ibert – Concerto
現代のフルート協奏曲の中で最高傑作とする人が多い曲です。
イベールのフルート協奏曲だけで解説記事をこちらに書きました。
1946 P. Sancan – Sonatine
サンカンの曲の中で最も有名とされるソナチネです。
まとめ
フレンチコンポーザを中心にして、パリ音楽院の卒業試験曲を紹介しました。
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